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「蛸壺や はかなき夢を 夏の月」と松尾芭蕉が俳句に記した季節。お盆を過ぎ、海は水温が最も高い時期を迎える。この時、梅雨のころから雌ダコの体内で熟してきた卵が蛸壺に産み付けられる。
マダコの卵は大きさが1ミリから2ミリの少し細長い卵形。冬に産卵期を迎えるイイダコの米粒大の卵よりはかなり小さい。
産卵の様子は、雌ダコが岩穴や蛸壺の天井に張り付く。体内からとんがった口のようなロートを通じて、2個づつ卵を吐き出し、その卵についている糸を絡めながら次々とぶどうの房のような卵の塊を作っていく。ひと房が数センチになると、また新たに房を作り始め、最終的には十本以上の卵の房ができる。その様子が、藤の花が咲きそろったように見えることから「海藤花(かいとうか)」と呼ばれる。
雌ダコはそのあと約3週間の間、飲まず食わずで新鮮な海水を吹き付けたり、卵につく汚れを拭い取ったりと卵の世話をする。9月になって2ミリほどのタコの赤ちゃんが泳ぎだすと、親ダコは安心したかのように安らかに死んでいく。子育ての情愛を感じる時だ。
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